このような症状がある方は
お読みください
- 特にダイエットなどもしていないのに体重が減ってきた
- 何もしていないのに、服のウエストなどが緩くなってきた
- 短期間に激しく体重が減ってしまった
- いつも便秘や下痢が続いている
- 吐き気が続き、またみぞおちのあたりがつっぱったような感じがする
体重減少の原因
医学的に体重減少という場合は、ダイエットなど意図的な体重コントロールをしていないにも関わらず、ここ6~12か月のうちに体重が4~5kgまたは5%程度減ってしまった状態を言います。また、標準体重より20%以上体重が低くなると、痩せすぎとなって健康に影響が出る可能性があるとされています。
体重が減少してくる原因は、食事などから吸収する栄養分の減少と栄養分の消費の増加の2つの原因があり、吸収する栄養分の減少には、食べる量の減少と食べた栄養分を吸収する能力の低下の2通りが考えられます。消費エネルギーの増加としては運動量が増えたことの他に、悪性新生物などに摂取したエネルギーが使われてしまうケースなどもあります。
ダイエットのための食事量減少
食事摂取量の減少の端的な例はダイエットによる体重減少です。しっかりとしたカロリー計算と栄養バランスを維持してのダイエットであればいいのですが、極端に食べる量を制限した場合、身体を維持するための栄養分が不足し、抵抗力が減少し病気に罹りやすくなったり、心のバランスが崩れて拒食症になったりしてしまうこともあります。
炭水化物を摂らない、脂肪分をまったく摂らないなど、極端に偏った食生活になると、身体の機能を保つための栄養分やミネラル、ビタミンなどが不足して体調不良を来したり、ひどい場合には命に関わってしまうような事態が起こることもあります。比較的若い女性に多い症状ですが、高齢になって食が細くなってしまった場合にも同様なことが起こります。
精神的なストレス
激しいストレスや過労などによって、食事を摂る気もしなくなったり、しっかり眠れなくなったりすることや、楽しかった趣味へのモチベーションなども低下してきたようなケースでは、落ち込んでしまい、食事を摂ることが億劫になったり、食べるのを忘れてしまうことがあったりします。
可能な限り規則正しい生活を心がけ、食事も決まった時間にきちんと3食摂るようにする、仕事は必ず適切な休憩をはさみながら行うようにする、一日の終わりに入浴などで心を開放するなど、ストレスや疲労をできる限り溜めないよう自分なりの方法で工夫しましょう。
その上で、食事もできず体重がどんどん減ってしまうほどのストレスがあるようなら、自己判断に頼らず、心療内科や精神科、カウンセリングなど専門家の手を借りてみることをお勧めします。
消化器系・内分泌系の疾患
ダイエットやはっきりしたストレスなどがないにも関わらず体重がどんどん減っており、胃腸の不調などを伴っていたりする場合は、何らかの疾患によって体重減少が起こっている可能性があります。
食慾減退、発熱、痛みといった症状などをともなうこともあります。これらの症状に心当たりがある場合は、すぐに当院を受診してください。
体重減少に関連する疾患
- 糖尿病
- 吸収不良症候群
- 胃・十二指腸潰瘍
- 潰瘍性大腸炎・クローン病
- 食道、胃、大腸、膵臓などのがん
- 甲状腺機能亢進症・バセドウ病
- アジソン病
など
生活習慣に問題があるなら
「糖尿病」かも?
食物から摂取した糖質は、消化吸収されるとブドウ糖になって血液に乗って、生命活動のエネルギーとして全身の細胞に運ばれます。余ったブドウ糖はグリコーゲンになり肝臓や筋肉に蓄積されます。この働きをコントロールしているのが膵臓で作られるインスリンです。
膵臓の機能が障害されてインスリンが作られなくなってしまったり、何らかの理由でうまく作用しなったりすると、血中にブドウ糖が溢れます(高血糖)。このような状態では、細胞がうまくブドウ糖をエネルギーとして利用できなくなるため、代わりにたんぱく質や脂肪分が分解されることになり、体重は減少します。
便の様子が変なら
吸収不良症候群
身体に必要となる栄養素は、胃で溶かされた食べ物に、十二指腸で膵臓、胆のうなどから消化酵素が加えられ、小腸で栄養素の大部分を吸収します。この過程のどこかに障害が起こると、食べたものを栄養素として吸収することができない、または吸収が不足して体重が減少してきます。
この場合は胃、十二指腸、小腸という消化管、膵臓、胆のう、肝臓といった消化器のどこかに原因となる疾患が起こっていることが考えられます。吸収不良症候群を起こしていると、脂肪分などが吸収されず、水にぷかぷかと浮く脂肪便が出る、慢性的な下痢を起こす、全身がむくむなどといった症状を伴います。
胃がムカムカするなら慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍
胃や十二指腸に炎症が起こりびらんや潰瘍など胃壁が傷ついているような状態になっていると、胃痛、悪心(吐き気)・嘔吐、胸やけ、胃もたれなど様々な不快な症状が現れ、それらによって食事量が減り体重減少が起こります。
原因の多くはピロリ菌感染によるもので、次いで非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やステロイド薬などの副作用によるものです。
若い世代で増えている
「潰瘍性大腸炎・クローン病」
大腸の粘膜に原因不明の炎症が起こり、びらんや潰瘍となります。炎症は直腸から発生し連続的に奥へと拡がっていきます。下痢や腹痛が強く、血便・発熱などが出現することもあり体重が減少します。
原因が不明で根治させる方法も見つかっておらず難病に指定されています。発症の要因として、自己免疫が関わっていることが分かってきています。症状の激しい活動期(再燃期)と症状の治まっている寛解期を繰り返すことが特徴です。ただし薬物治療や生活のコントロールによって発病前のような日常を送ることは可能です。
潰瘍性大腸炎と同じような症状を呈する疾患にクローン病があります。クローン病も自己免疫が関わる疾患で、活動期と寛解期を繰り返すことが特徴ですが、潰瘍性大腸炎が大腸に限定された連続的な炎症であるのに対し、クローン病では口から肛門までどこにでもランダムに炎症が起こり、栄養が摂れない状態も強い傾向があります。
気づかない間に
進行しているかも「がん」
消化管や消化器のがんは、早期にはほとんど自覚症状が無く、ある程度進行してから気付くことが多いのが特徴です。
消化管のがんが大きくなると、消化管の内腔が狭窄し、食物の通過しにくくなります。また膵臓や胆管、肝臓などのがんでは痛み、吐き気などの症状によって食慾が低下し体重が減少するケースや、がん細胞に栄養が取られたり、悪液質と言われる体調不良が出現して体重が減少します。
甲状腺機能亢進症・バセドウ病
のど仏のところにある蝶のような形をした甲状腺から分泌されるのが甲状腺ホルモンです。甲状腺ホルモンはからだの「新陳代謝」を調節しています。 脈拍数や体温、自律神経の働きを調節し、エネルギーの消費を一定に保っています。甲状腺ホルモンが過剰になるのが甲状腺機能亢進症とバセドウ病です。 新陳代謝が亢進するので食欲は旺盛なのに痩せてきます。 ひどい場合は、暑がりで汗かきになったり、動悸がしたり、手や指が小刻みに震えたりします。血液検査で診断します。
アジソン病(慢性副腎皮質機能低下症)
副腎皮質からはカリウムとナトリウムのバランスを調節するホルモンなど、いくつかの重要なホルモンが分泌されています。この機能が低下することで、疲労感、食慾不振などを起こし、体重は低下します。若い女性に多い疾患です。
受診の目安
自ら体重のコントロール(ダイエットなど)をしていないにも関わらず、6~12か月の間に4~5kg以上体重が低下した、または体重の5%以上低下した場合、医学的意味での体重減少が疑われ、何らかの疾患が隠れている可能性があります。自己判断をせずに、当院を受診してください。
これに加えて、胃痛・腹痛、胸やけ、胃もたれ、続く下痢や便秘といった症状のある方は、早いうちに当院を受診することをお勧めします。
特に、こうした体重低下に伴って、発熱、疲労感、喀血や吐血(気管や肺からの出血が口から出るのが喀血、消化管からの出血が口からでるのが吐血です)などの症状を伴う場合は、速やかに当院を受診してください。