このような症状は過敏性腸症候群(IBS)の
可能性があります
- 半年以上、下痢を伴う腹痛がある
- 半年以上、便秘を伴う腹痛がある
- 半年以上、下痢と便秘の繰り返しが続く
- 会社に行こうと家を出るとお腹が痛くなりトイレに駆け込む
- 通勤・通学電車に乗っているとお腹が痛くなる
- 大事な会議や発表の前になると下痢でトイレに行きたくなる
- 試験の最中にお腹が痛くなる
- 便秘気味でいきんでもコロコロとウサギの糞のような便しかでない
- 硬い便がでてもいつも残便感がある
- 仕事や学校のある日と休みの日では用便の状況が変わる
- 腹痛や下痢、便秘の症状が排便に伴っていったん治まる
- 腹痛があり、膨満感を感じたりガスが溜まりやすかったりする
- 上記の症状が寝ているときは現れない
以上のような症状に身に覚えがある方は、過敏性腸症候群(IBS)かもしれません。特に以前から不調があって、検査を受けても炎症や潰瘍などの症状は認められず、ストレス性の胃腸炎といった診断を受けていた方は、その可能性が高いと考えられます。
過敏性腸症候群は、命に関わるような疾患ではありませんので軽視されがちですが、症状がトイレに絡む部分が多く、放置すると生活の質(QOL)を大きく低下させてしまいます。 これらの症状でお悩みの方は、いつでもご相談ください。
過敏性腸症候群とは
下痢や便秘といった便通の異常、それにともなう腹痛といったお腹の不快な症状が続いていて、検査をしてもどこにも炎症や潰瘍といった器質的な異常が見当たらない場合は、過敏性腸症候群(IBS)が疑われます。
以前はストレス性の胃腸炎などと診断されることが多かったのですが、近年の研究で腸の各種機能が何らかの理由で障害されることで、これらの症状が起こっていることが分かってきました。
この病気は、日本でも近年増えてきており、日本人の10~15%程度が過敏性腸症候群に罹患しているという報告もあります。比較的若い人に多く、人によって便秘を繰り返す、下痢を繰り返す、下痢と便秘を繰り返す、膨満感やガスが溜まるなど大きく4つの型に分類されています。どれも便通に関わることだけに、日常生活に大きく影響が出ることもあり、特に若い世代に多くみられる疾患として、学業や仕事のスムーズな進行に大きく影響を及ぼしてしまうこともあります。
この疾患は発症のメカニズムが似ている機能性ディスペプシアと合併し、胃・腸ともに不快な症状が現れることも多く、頭痛やめまい、肩こりといった全身症状、さらに心理的な側面にまで影響を及ぼし、不眠、不安感、抑うつといった精神症状が現れることもあります。
そのため、過敏性腸症候群の治療にあたっては、患者様と医師の密接なコミュニケーションと信頼関係が大切になってきます。その点、当院では消化器内科の専門医として、臨床経験も豊富な医師が、過敏性腸症候群や機能性ディスペプシアといった機能性消化管障害(FGIDs)に分類される疾患の治療にも重きを置いています。愛幸会グループの原クリニックでは心療内科的な治療も行っていますので安心してご相談ください。
過敏性腸症候群の原因
なぜ過敏性腸症候群が発症するかについては、まだはっきりとは分かっていません。
しかし、近年の研究によって、腸のぜん動運動などの運動機能に障害が起こっていること、腸の知覚機能に障害が起こって知覚過敏になっていること、そこにストレスや緊張といった精神的・心理的要因、食生活の要因などが加わって、様々な腸の不快な症状を起こしているのではないかということが分かってきました。
さらに腸内細菌叢(腸内フローラ)との関係も一因として研究が進んできています。精神的・心理的な影響としては「腸は第二の脳」とも言われるように、腸の活動は脳と密接な関わりがあり、その仲立ちとして自律神経の交感神経と副交感神経がバランスを取って、腸の水分吸収機能や便として排出する機能を司っています。
ストレスや緊張などによってこの自律神経のバランスが崩れてしまい、腸機能に障害が起こり腸の筋肉が異常に緊張して下痢やけいれん型の便秘を起こすことが考えられています。
過敏性腸症候群の診断について
過敏性腸症候群は、腸管に炎症、びらん、潰瘍といった器質的な疾患が認められないことが大きな前提となっています。
そのため、問診で症状や経緯などをお訊きした後、血液検査で炎症の有無や感染の有無、消化管以外の臓器の異常などを調べ、大腸カメラ検査で器質的な疾患の有無を調べるなど、各種検査で除外診断をして行きます。
過敏性腸症候群の国際的な
診断基準
各種検査において、器質的な疾患が認められなかった場合、国際的な消化器病学会によって定められたローマ規準という機能性消化管障害の診断基準があり、これに従って日本消化器病学会が発行したガイドラインを基に診断していくことになります。
このローマ規準は1992年に最初に登場して以来、版を重ねており、最新版は2016年に発表されたRome IV規準ですが、これまでの診療の積み重ねから、現状では2006年に発表されたRome III規準が主として使用されています。
Rome Ⅲ基準
6か月前から症状があって、なお過去3か月の間に,月に3日以上にわたって腹痛や腹部不快感が繰り返し起こっていることに加えて、次の1.から3.の項目のうち2つ以上にあてはまる
- 排便によって腹痛や腹部不快感などの症状が軽減すること
- 発症時に排便頻度が多くなったり少なくなったりといった変化があること
- 発症時に便の見た目に変化があること
※腹部不快感とは、痛みとは言えないような張りなどといった腹部の不快感を指す用語です。
※3.の便の見た目の判断には「ブリストル便性状スケール」という国際的な便形状の指標を用いて判断します。
排泄ケアナビより引用
Rome Ⅳ基準
6か月以上前から症状があり、最近3か月間は、月に4日以上腹痛が繰り返し起こり、次の1.から3.の項目の2つ以上があてはまる
- 排便に関連して症状が変化すること
- 排便頻度が多くなったり少なくなったりと変化を伴うこと
- 便性状の変化を伴うこと
ローマ4規準では、ローマ3で月のうち3日以上であったものが、月のうち4日以上と改められ、腹部不快感という表現が曖昧であることから削除され、腹痛のみになっています。また2.と3.から「発症時」という限定がなくなるなど表現が変化しています。
ただし診療の現場では、腹痛と言えないような不快感は確かに指標となるため、腹部不快感も診断の目安として使用しています。
過敏性腸症候群の病型
過敏性腸症候群には便の性状により4つの型があります。
便の性状については、一般的に国際的な規準となっている「ブリストル便性状スケール」を使用しています。
便秘型IBS(IBS-C) | 硬い便またはコロコロした便が25%以上と多く、軟便・泥状便または水様便が25%未満と少ない |
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下痢型IBS(IBS-D) | 硬い便またはコロコロした便が25%未満と少なく、軟便・泥状便または水様便が25%以上と多い |
混合型IBS(IBS-M) | 硬い便またはコロコロした便も軟便・泥状便または水様便がどちらも多く、共に25%以上ある |
分類不能型IBS | 上記のどれにも当てはまらない |
便秘型(IBS-C)は女性に多く、下痢型(IBS-D)は男性に多い傾向があります。
全体的には女性に多いのがこの病気の特徴の1つです。
過敏性腸症候群の治療
様々な要素が絡み合って発症するため、治療も薬物療法・食事療法・運動療法・心理療法など様々な方面から、4つの型に合わせてアプローチします。
薬物療法
便秘、下痢などの症状への対応を行うだけではなく、初期治療として腸の運動機能の亢進や抑制といった機能改善薬としてセロトニン受容体拮抗薬、抗コリン薬などをそれぞれの病型に合わせて使用します。 精神的・心理的な要素に対して愛幸会グループの原クリニックでは心療内科的な治療も行っています。
食事療法
一般的には炭水化物や脂質の多い食物は病状の悪化に繋がるので、これらを控えながらバランスの良い食事を摂ることが大切です。香辛料や酒類・コーヒーといった嗜好品も悪化要因ですので大量に摂取することは控えましょう。 過敏性腸症候群に関しては病型や患者タイプによって良い物、悪い物が異なり、一般的に身体に良いとされるものも、かえって発作のきっかけになってしまうこともあり、それぞれの特質をしっかりと見極めて食事をコントロールしていくことが大切です。
運動療法
便秘型の場合、運動療法によって改善される可能性があります。運動は特殊なものではなく、激しいものである必要もありません。
ウォーキング・ジョギング・水泳・ジムトレーニングなどそれぞれに適したもので構いません。週3日ぐらいを目安にきちんと継続することが大切です。
心理療法
精神的・心理的な要素が強くみられる場合は、薬物療法の他にカウンセリングなど心理的な療法でアプローチすると効果的なケースがあります。
過敏性腸症候群で
お困りの方は当院へ
発表前に突如襲ってくる腹痛、通勤電車で何度も襲ってくる腹痛と便意など、生活の質が大きく低下するのが過敏性腸症候群ですが、ストレスだからしょうがない、体質だからと思って諦めて放置する人が多いです。
この疾患は、しっかりと個人のタイプを含めて診断し、根気よく治療を続けることで必ず生活の質(QOL)を取り戻すことのできる病気です。
当院では、豊富な診療経験を基に、患者様それぞれの病態や体質をしっかりと見極め、その人のライフスタイルに即した形で納得いただけるような治療方法を提案していますので、過敏性腸症候群かなと思ったら、お気軽にご相談ください。
腸の運動機能の亢進や抑制といった機能改善薬としてセロトニン受容体拮抗薬、抗コリン薬などを用いた治療で改善しない場合は愛幸会グループの綾瀬市にある原クリニックにおいて心療内科的治療を行っております。