痛風と高尿酸血症
尿酸は身体のエネルギー物質や細胞の核を構成している物質の老廃物であり、常に身体の中で作られ続けています。
体内で尿酸が過剰に作られたり、排出がうまくいかなくなると、血液中の尿酸含有度が高くなり、尿酸は血中に溶けなくなり結晶化して腎臓を傷つけたり、関節に溜まって痛風発作を起こします。尿中に結晶が溜まると尿路結石の原因にもなります。近年では尿酸結晶は血管内の細胞にも取り込まれてダメージを与え動脈硬化の原因になると言われるようになりました。このように高尿酸血症を放置すると腎臓疾患や脳血管障害、冠動脈障害などさまざまな疾患を発症しやすくなります。血中尿値の異常が指摘されたら、当院をお早めに受診して治療を開始することをお勧めします。
高尿酸血症(痛風)の原因
人体には尿酸プールがあって、作られた尿酸はそこで一定量貯めることができ、新しく血液に混ざって送られてきた尿酸の量だけ、貯められていた古い尿酸が尿となって腎臓から排泄されます。
尿酸が過剰に作られたり、排出がうまくいかなかったりして、このシステムがうまく働かなくなると血中の尿酸濃度が高くなります。プリン体を多く含む食べ物を食べ過ぎたり、多量の飲酒によって尿酸が増えてしまうことが大きな原因の一つです。
その他にも体内の代謝システムが働き過ぎるなどでバランスが崩れた時に、自身のもっているプリン体から尿酸が過剰に作られることもあります。
高尿酸血症により腎機能が低下すると、尿酸プールから送られてきた尿酸をうまく排出できなくなり尿酸値が上がってしい、更に腎機能を悪化させるという悪循環が起こります。
痛風発作について
血液中の尿酸の結晶は関節に溜まります。運動などがきっかけで関節から剥がれ、関節液中に移動すると免疫システムが働いてしまい、激しい痛みを起こします。これが痛風発作です。痛風発作は高尿酸血症が起こす症状の1つです。主に足の親指の付け根や膝・くるぶしなどに発症し、俗に言う「風が吹いても痛い」というほど激しい痛みをもたらし歩行も困難になります。
この痛みは最初の24時間程度をピークに数日から1週間程度続きますが、その後は何もなかったかのように治ってしまいます。
しかし、高尿酸血状態が治ったわけではありません。
その後も尿酸値の高い状態が続けば、痛風発作だけではなく、様々な症状が全身に起こってきますので、しっかりと治療して尿酸値を正常値にコントロールしていくことが大切です。
なお、痛風発作が起こっている時に高尿酸血症の治療を始めると、かえって痛風発作の症状を悪化させてしまう場合がありますので、まずは痛みをコントロールして発作が治まったところで、改めて血中の尿酸値を測定し治療の指針を立てていくことが重要です。
高尿酸血症(痛風)の治療
痛風発作で来院された場合は、痛風発作をまず治めてから高尿酸血症の治療開始となります。まずは、血液検査によって血清尿酸値を計測します。血清尿酸値は男女ともに7.0mg/dLを超えると治療が必要な状態とされます。この数値は、平均してこれ以上尿酸の血中濃度が上がってしまうと、飽和して尿酸塩結晶ができやすくなる数値です。
高尿酸値を急激に下げようとすると、かえって痛風発作が起こりやすくなってしまうので、治療には厳密なコントロールが必要です。まずは食事と運動の両面から生活習慣の改善を行い、必要に応じて薬物療法を追加していきます。
食事療法
肥満は尿酸値を上げる大きな要素です。そのためカロリーコントロールで標準体重を保つことを目指します。尿酸の原料となるプリン体はほとんどの食べ物に含まれますが、中でも含有量の多い食べ物を極力避けていくことが大切です。
プリン体の多い食物としては、レバー類、魚の肝類、イワシやカツオ、魚の干物類などです。従来プリン体が多いと言われていた魚卵は実際にはそれほどではないという結果がでています。ビールだけではなくアルコール類はすべて尿酸値を上げる働きがありますので、適量(ビールなら350mL缶1本、日本酒なら1合程度)を守ることが大切です。
運動療法
激しい運動をすると、エネルギーの代謝によってかえって尿酸を増やしてしまいます。適度な有酸素運動が大切ですが、内容については患者様の尿酸値の状態などによっても異なりますので、医師と相談しながら行うようにしてください。
薬物療法
生活習慣の改善によって思ったような効果が得られない場合、薬物治療を行います。判断の基準は血清尿酸値、痛風結節(尿酸塩結晶が関節に溜まる症状)、痛風発作の有無などです。
薬剤は、尿酸生成抑制薬、尿酸排泄促進薬などから、患者様の症状に合わせて処方します。 治療の目標は血清尿酸値6.0mg/dL以下で、それ以下にコントロールできても、結晶化した尿酸が体外に排出されるまでは治療を続ける必要があります。急減に数値を下げてしまうと、かえって痛風発作の引き金になってしまう場合がありますので、投薬は慎重にコントロールしながら行います。