大腸ポリープとは
ポリープとは、皮膚や粘膜の表面に飛び出してできる瘤やイボのようなものの総称で、これが大腸の粘膜にできたものが大腸ポリープです。大腸ポリープで一番多いのは腺腫と呼ばれるもので、その他に鋸歯状ポリープ、過誤腫性ポリープなど何種類かあります。ポリープ自体は良性の腫瘍ですが、腺腫など腫瘍性のポリープは放置した場合、一定の確率でがん化すると言われています。大腸がんの多くは、最初は良性の腫瘍としてできたものが、少しずつがん細胞に置き換わっていくということです。
大腸ポリープは、多くの場合よほど大きくならない限り自覚症状が現れることはありません。大腸カメラ検査によって、早期にポリープを発見し、その塲で切除しておくことは、将来のがん化を予防するために大切です。
大腸ポリープ切除の重要性
腫瘍性の大腸ポリープにがん細胞が生まれ、数年かけてゆっくりとがん細胞に置き換わっていきます。がん細胞はやがてポリープ内だけに止まらず、粘膜下層から固有筋層へと進み、やがて腸管を出て近接する臓器に浸潤します。また、リンパ液や血液などに乗って離れた臓器やリンパ節などに転移して全身に広がってしまいます。
がん細胞がポリープの中に留まっているうちであれば、内視鏡による切除で完治することができます。
ポリープ内にできるがん細胞は、ポリープが大きくなっていくとその一部に発生するものと考えられていますので、大きくなる前にポリープを切除しておくことががん予防のために重要です。
切除方法
内視鏡を使った大腸ポリープの切除は、ポリープの状態に合わせて以下のような何種類かの方法から最適のものを選択して行います。
いずれの方法でも、切除したポリープや疑わしい病変は、病理検査を行ってがん細胞が含まれているかどうか診断します。
内視鏡的ポリペクトミー
大腸カメラ検査では、スコープの先端にスネアという部品をセットしておきます。スネアは金属製の細い投げ縄のような形状をした電気メスの一種です。ポリープを発見したら、スネアをポリープの付け根にある茎の部分にかけてある程度締め付け、電気を通して茎を焼き切ります。
傷口は焼かれて出血は止まりますが、通電のための熱が粘膜や下部組織にまで影響を与える可能性があるため、限られた条件下で行う術式となります。
内視鏡的粘膜切除術(EMR)
茎のない平坦なポリープや早期の大腸がんなどの場合、スネアをかけることができません。そのため、粘膜層にあるポリープの下の粘膜下層という部分に生理食塩水を注入し、ポリープや早期がんを浮かせて、人工的につくられた茎の部分にスネアをかけ、締め付けてから通電し焼き切る方法です。
平坦なポリープや粘膜に直接できた大腸がんを安全かつ確実に切除することが可能です。粘膜下層に注入した生理食塩水は冷却剤ともなり、通電による熱のダメージも吸収され、さらに下層の固有筋層などへもダメージを与えることがありません。
コールドポリペクトミー
ポリープの茎にスネアをかけて締め付けるところまではポリペクトミーと同じですが、コールドポリペクトミーでは、スネアに通電せず、そのまま茎を扼除してポリープを取り去ってしまいます。
ポリペクトミーによってスネアに通電した場合、切除部分は熱傷となり、その際出血は止まりますが、熱傷が治癒してくるとその部分がかさぶたになり、食物などによって擦れて剥がれてしまった場合に出血の危険があります。通電の際の熱で粘膜層だけではなく、粘膜下層から固有筋層などまでダメージが及ぶ可能性もあるため、近年では特殊な例を除きコールドポリペクトミーが選択される場合が多くなっており、当院でも通常はこの方法でポリープの切除を行います。
切除後の注意事項
大腸カメラ検査の際のポリープ切除は、日帰りではありますが手術の一種ですので、事前に同意書をお書きいただいております。
止血などの処置はしてあるとはいえ、メスを使用するため腸粘膜に手術創が残ります。術後の合併症として、非常に稀ですが、術後3日目ぐらいまでは腸穿孔や腹膜炎を起こす可能性が0.04%程度、2週間目ぐらいまでは出血の可能性が0.6%程度あります。
そのため、手術後2週間程度までは行動に制限を設けております。手術後の思わぬ事態を起こさないように、行動制限をお守りいただけるようお気を付けください。
行動制限は以下のように術後日数で異なってきますのでそれぞれに合わせて、事前にスケジュールの調整などをお願いしております。
これらの日程は、切除したポリープの数、大きさなどで変化しますので、あくまで目安とお考えください。詳しくは、術後に医師よりご説明いたします。
切除日から3日間
手術でできた傷がまだ安定していません。ちょっとした刺激で出血してしまうこともありますので、できるだけ安静にお過ごしください。特に入浴については、身体が暖まることによって出血が起こりやすくなります。当日は入浴やシャワーを控え、翌日からも熱いお湯に浸かったり長湯をしたりは避けて、さっと身体を洗う程度かシャワーなどで済ませてください。
事務系のデスクワークなどについては、翌日から可能なものもありますが、医師と十分相談してください。
手術当日と翌日は食事内容にも十分気をつけて、消化の良いうどん、白粥などで済ませるようにしてください。
3日目以降も1週間程度は高脂肪食や刺激の強い香辛料などは避けて、消化の良い食事を心がけてください。
切除後2週間
力仕事や重い物を持つなど、腹圧のかかる作業や仕事は2週間程度控えてください。運動もテニスやゴルフ、水泳、ジョギングなど激しい運動はもちろん、自転車に乗ることや、30分以上のウォーキングも2週間は避けてください。長時間の自動車の運転もお控えください。
1週間後から食事は普通にして構いませんが、飲酒については出血しやすくなる傾向がありますので10日~2週間程度は禁酒をしてください。
旅行、出張などの移動も、出血した場合に適切な治療を行うことができない可能性がありますので、2週間はお控えください。特に飛行機での移動は、気圧の関係で出血リスクが高まりますのでご注意ください。
どうしても外せない出張などが分かっている場合は、予約を後にずらすか、検査だけ行い、もし大腸ポリープなどが見つかった場合は、日程終了後に再度手術を行うような方法もありますので、あらかじめご調整ください。
服薬中の方
血栓塞栓症があるか、心房細動による血栓予防のためなどで、抗凝固薬や抗血小板薬など、いわゆる血液をサラサラにする薬を服用している方は、手術による大出血のリスクがあるため、休薬が可能か主治医の先生とよくご相談してください。具体的にはワーファリン、イグザレルト、プラザキサ、リクシアナ、バイアスピリン、プレタールなどのお薬です。
なお、以前は検査のみの場合も休薬が勧められていましたが、現在では、検査のみの場合の休薬はガイドラインで非推奨となっています。原疾患の状態により、まずは休薬せずに検査を行い、切除すべきポリープなどが見つかった場合は、しばらく休薬の上で切除を行うなどの対応を考えます。
大腸ポリープ切除の費用
3割負担の方 | 2割負担の方 | 1割負担の方 | |
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大腸ポリープ切除 | 19,500円~27,000円 | 13,000円~18,000円 | 6,500円~9,000円 |
※ポリープ切除は、数や大きさによって費用が異なってきます。